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東京高等裁判所 平成元年(行コ)89号 判決

控訴人(附帯被控訴人) 鹿沼税務署長

代理人 合田かつ子 ほか四名

被控訴人(附帯控訴人) 勝和機工株式会社

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

被控訴人の附帯控訴を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

主文同旨

二  被控訴人

1  控訴人の控訴を棄却する。

2  原判決中被控訴人敗訴の部分を取り消す。

3  控訴人がセーリングボードに係る物品税について原判決添付の別表「更正の請求年月日」欄記載の日付で被控訴人がした各更正の請求(ただし、昭和五九年七月三一日付でした課税期間昭和五八年五月分から昭和五九年四月分までに関するものを除く。)に対して同表「原処分年月日」欄記載の日付でした更正をすべき理由がない旨の各通知処分及び昭和五九年一二月三日付で被控訴人に対してした無申告加算税賦課決定処分をそれぞれ取り消す。

4  当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから(ただし、原判決四枚目表七行目の「国税通則」を「国税通則法」に改め、同八枚目裏一行目の「ゴムヨット」の前に「ゴムボート、フアルトボート及び」を付加し、同一〇枚目裏末行の「掲名する」を削り、同一一枚目表一行目の「品名を掲げる」を「品名をもつて掲げる」に、同一二枚目裏七行目の「課税物品であると」を「課税物品として」に改め、同一三枚目裏七行目の「セーリングボード」の前に「右改正に係る規定は、」を付加し、同二八枚目裏二行目の「輸入物品」を「輸入品」に改める。)、これを引用する。

一  控訴人

1  ある物品が物品税法上の課税対象であるかどうかについては、その物品が同法別表に具体的に掲名されている物品のどれか一つに特に類似するものに限られるのではなく、複数の掲名物件に類するものであれば足りるが、仮に具体的に掲名されている物品の一つにおける本質的要素に特に類似しているかどうかをもつて判断すべきものとしても、その本質のとらえ方には、しやし品、美飾のし好、娯楽等の性質を持つ消費の目的となる物品に課税することを目的とする物品税法の法意が反映されなければならない。したがつて、物品の性状のみを重視して決定すべきものではなく、その用途、製造意図、ことに娯楽性等の当該物品の国民生活における必要度が重要な要素とされなければならない。この意味において、ゴムボートの本質を舟としてとらえ、その安定性において本件物品がこれに類似しないと解するのは誤りである。

2  具体的掲名物品の本質を考慮するに当たつては、掲名物品の共通的要素をも勘案して定めるべきであるところ、本件の場合、旧法別表八の8に具体的に掲名されている三物品の共通的要素といえるのは、水上遊戯具類であること、浮力を有していること、航行性を有していること、使用時以外は折たたむなどして縮小できること、娯楽性を有していること、の五点であるが、本件物品は、右の共通的要素をすべて具備している。

3  物品税は、昭和一二年八月に公布された北支事件特別税法の一環として創設された物品特別税にその起源を発し、現在に至るまで数次の改正が行われてきたが、旧法別表八号のうち1、6、7は、元来モーターボート、スカール、ヨツト等舟であることが本質の、すなわち、船艇類として課税されてきたのに対し、8のゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツトその他これらに類する折たたみ式の水上遊戯具類は、数次の改正によつても一貫してモーターボート、スカール、ヨツトの一群とは法定された分類を異にしており、遊戯具として課税されてきたものである。したがつて、右8に掲名されている三物品の本質を判断するに当たつては、船艇としての要素を強調すべきではなく、あくまでも水上の遊戯具類であることを基礎においてなされるべきものである。

二  被控訴人

1  本件物品については、昭和五九年の法改正により新たに物品税が課税されることとなつたが、同改正においては、本件物品の部分品等については暫定的な非課税や税率の軽減等の経過措置が講じられたにもかかわらず、本件物品についてはそのような措置が講じられていない。これは、立法の経緯・趣旨等に照らして不合理であり、国民の正義観念に著しく反するものであつて、このような経過措置を講ずるかどうかは立法府の裁量に属するとしても、右立法は、裁量権を逸脱し、憲法一四条の趣旨に反するものである。仮に右改正法自体は合憲であるとしても、それを被控訴人に対する関係において適用することだけは違憲である。また、仮にそれを違憲とはいえないとしても、本件物品については、それが新規課税物品である以上、勿論解釈として部分品についての軽減措置が準用されるべきである。

2  本件物品については、昭和五九年四月末までは非課税であり、しかも同時に課税されることとなつた部分品については同年九月末まで暫定的に非課税とされているのであるから、通常一般人の立場からすれば、本件物品に係る物品税についても同年五月一日以降も暫定的に非課税であると考えるのが当然であるうえ、被控訴人において、これらの疑問点を課税当局に対して問い質すに日時を要したため、同年五月分についての申告が期限経過後になされたものであり、その徒過も僅か二日間に過ぎなかつたのであつて、このような経緯に徴すると、申告期限内に納税申告書を提出しなかつたことについては国税通則法六六条一項ただし書の「正当な理由」があるというべきである。

第三証拠関係

記録中の証拠目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因一項(被控訴人に関する事実)、同二項(被控訴人の本件物品に係る物品税についての納税申告及び更正請求並びにこれらに対する控訴人の本件通知処分に関する事実)、同三項(本件無申告加算税賦課決定処分に関する事実)及び同四項(右各処分に対する被控訴人の不服申立てに関する事実)は、いずれも当事者間に争いがない。

二  本件物品への課税の取扱い等に関する経緯

1  <証拠略>によれば、次のの事実が認められる。

本件物品は、昭和四二年にアメリカにおいて発明され、日本への輸入は、昭和四七年九月頃名古屋港(名古屋税関扱い)に陸揚げされたのが最初であつた。ところで、内国消費税の課税対象である輸入物品については、輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律により、税関において関税と併せて内国消費税を徴収することとされているが、当時、本件物品の輸入に関する徴税業務を担当していた名古屋税関の担当官が、名古屋国税局に対し、本件物品が物品税の課税対象とされるものかどうかについて問い合わせたところ、同局は、物品税法(昭和四八年法律第二二号による改正前のもの。)別表の課税物品表第二種第八号7に掲げる「折りたたみ式水上遊戯具類」の「折りたたみ式」には組立て式のものも含まれるものと解されることなどを根拠として、これを肯定すべきである旨回答した。そして、これ以後、本件物品に対する物品税法上の扱いは、一貫して旧法別表八の8で規定する「ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツトその他これらに類する折りたたみ式水上遊戯具類」に該当するものとして取り扱われ、その旨は、国税庁消費税課編集に係る「物品税取扱事例集課税物品編」に登載されるなどして広く一般に公開され、右の解釈及び取扱いは、当初から定着していた。

2  抗弁一ノ(二)、(三)の各事実(被控訴人は、本件物品の輸入の際物品税の申告、納入をして本件物品が課税物品の扱いを受けていることを認識しており、また、本件物品を製造、移出していながら約三年間にわたつて納税申告書の提出を怠り、課税当局からの指示等により納税をした事実があつたこと)は、当事者間に争いがない。

三  物品税法の沿革及び本件物品への課税の沿革等

<証拠略>によれば、次の事実が認められる。

1  物品税法は、昭和一二年八月に公布された北支事件特別税法の一環として創設された物品特別法にその起源を発し、その後支那事変特別税法を経て昭和一五年三月二九日に制定されたものであり、しやしの抑制と財政収入の確保を狙いとしていた。当時、水上遊戯具類は課税対象とされていなかつたが、昭和一三年に「娯楽用のモーターボート、スカール及びヨツト」が、昭和一四年には「玩具」、「運動具」も課税対象に加えられ、更に昭和一六年の改正により、玩具と並んで遊戯具もその対象となつた。モーターボート、スカール及びヨツトは、従来「娯楽用」のものが課税対象とされていたが、昭和二五年、スカール、ヨツトのうち「運動用具」に当たるものも課税されるようになり、昭和二七年にはモーターボートも運動用具として課税対象に加えられた。なお、昭和三四年当時、ゴムボートは、課税対象として掲名されてはいなかつたが、遊戯具類として取り扱われ、課税されていた。

2  昭和三七年には、間接税一般について大幅な見直しが行われ、課税の軽減合理化の趣旨に基づいて規定が整備された。これによつて、対象物品に関する従来の包括掲名による特定のやり方が改められ、原則として特定の掲名によることとなつたが、モーターボート、スカール及びヨツトは、従前の娯楽用、運動用具の分類に替わつて、全長の長さによつて二分されたほか、遊戯具類として、ゴムボートが掲名され、更に、「その他遊戯の方法がこれらに類する遊戯具で政令で定めるもの」と法定されたことを受けて、物品税法施行令において、「ゴムヨツトその他ゴムボートに類する折りたたみ式の水上遊戯具類とする。」と定められた。

3  昭和四一年の改正では、昭和三七年の改正に引き続いて税負担の軽減が図られるとともに、全面的に課税物品表の組替えが行われた結果、同法別表課税物品表第二種第八号は、大型モーターボート及び大型ヨツトと小型モーターボート、小型ヨツト及びスカールの二グループのほか、「ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツトその他これらに類する折りたたみ式の水上遊戯具類」等が船艇類及びその関連製品並びに娯楽用品、スポーツ用品及び遊戯具類の細分類として法定された。昭和四八年には、モーターボート、ヨツトが従来の大型、小型のほかに中型を加えた三つに分類されたうえ、スカールが課税対象からはずされたが、水上遊戯具類関係は従前のとおりとされた。

4  昭和五九年の法改正では、新たに開発された物品への課税、従来から存在する物品でもその消費の実態や現行の課税物品とのバランスからみて課税することが適当と認められるものへの課税のほか、物品自体は従来から課税対象とされているが、部分品だけの取引については課税対象とされていなかつたことから生じる不均衡を是正するための部分品への課税等の改正が行われた。本件物品については、旧法別表八の8の水上遊戯具類に当たるとして旧法当時から課税対象として扱われていたが、本件物品を扱う業者のうちには、これを一式の物品としてではなく、部分品単位で取引する者が現れ、この場合には課税することができなかつたところから、右のような取引形態の差異により課税の扱いが異なるという不公平を是正するため、本件物品の部分品(ボート及びボートを含む部分品ユニツト)が新たに課税対象とされた。なお、旧法別表八の8の規定上は、新たに本件物品が掲名され、あたかも新規課税対象物品であるかのような形式になつているが、これは、本件物品の部分品のみを掲名し、本件物品そのものを掲名しないことは立法技術上不自然であることなどの理由から、従来折りたたみ式の水上遊戯具類に含まれるものとして課税扱いされていたものを独立させて掲名したことによる。そして、このことは、新たに物品税の課税対象とされたものについては、暫定的な非課税や税率の軽減の措置が設けられるのが通例であるところ、右の改正により本件物品の部分品であるボード及びボードを含む部分品ユニツトには暫定措置が講じられたが、本件物品自体にはそれが行われなかつたことからも推認できるものであつた。

以上のとおり認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

四  本件物品に関する課税要件の有無について

前示のとおり、本件物品が物品税法上の課税物品として掲名されたのは、昭和五九年改正法による改正後の物品税法においてであつて、旧法上は本件物品の具体的品名を掲げた規定はないから、本件物品が旧法の解釈上も課税物品であるというためには、本件物品が、旧法別表八の8(以下「本件規定」ともいう。)に掲げる「ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツトその他これらに類する折りたたみ式水上遊戯具類」に該当することが必要であるところ、右の規定は、「ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツト」と「これらに類する折りたたみ式水上遊戯具類」とが「その他」で結ばれており、このような場合、「その他」で結ばれるものは、前者と後者とが並列的関係に立つものと解されるから、本件物品が本件規定に該当するというためには、本件物品が、「折りたたみ式水上遊戯具類」であつて「これら(ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツト、以下これらを一括して「本件掲名物品」という。)に類する」ものであることが必要である。

ところで、「折りたたみ式水上遊戯具類」に該当する物品が「これら(掲名物品)に類する」ものであるかどうかの判断に当たつては、物品税の課税の趣旨並びに掲名物品の性状、構造、機能、用途等を総合的に検討するとともに、本件規定自体についての立法の経緯をも考慮して、本件規定が、物品のいかなる特質に着目して課税の対象を定めたのかを合理的に把握することが必要であるが、少なくとも機能又は用途の点において、掲名物品に共通すると認められる特質が当該物品にも存する場合には、当該物品が掲名物品に類するものと解して妨げないというべきである。

これを本件について見るに、旧法別表八の8の掲名物品の性状、構造、機能、用途等の点は、原判決認定のとおり(同四四枚目(理由の九枚目)表一行目から同四五枚目(理由の一〇枚目)表一〇行目までのとおりであるから、これを引用する。ただし、同四四枚目(理由の九枚目)表二行目から三行目にかけての<証拠略>を<証拠略>に、同裏四行目の「荷物運搬用のもの等がある。」を「荷物運搬用のもの等があり、帆をつけてヨツト状にして使用することもできる。」にそれぞれ改め、同四五枚目(理由の一〇枚目)表一行目の「スポーツ用である。」の後に「なお、全長は三メートル程度、重量は約一五ないし二〇キログラムである。」を付加する。)であり、右の認定事実によれば、本件掲名物品は、形状や使用方法等の細部において相互に差異が認められるものの、いずれも、使用時以外は折りたたみ、あるいは組み立てられていたのを分解するなどして縮小することができる水上遊戯具類であつて、本件規定にいう「折りたたみ式水上遊戯具類」に該当するものであることが明らかであり、またその機能ないし用途に関する要素として、人が乗つて水上の航行を楽しむための器具であつて、携帯ないし運搬に便利であるという共通の特徴を有しているものということができる。

他方、本件物品の性状、構造、機能、用途等は、原判決認定のとおり(同三六枚目(理由の一枚目)裏八行目から同三九枚目(理由の四枚目)裏八行目までのとおりであるから、これを引用する。)であり、右認定事実によれば、本件物品もまた、原判決理由説示のとおり(同三九枚目(理由の四枚目)裏一〇行目から同四二枚目(理由の七枚目)表一〇行目までのとおりであるから、これを引用する。)折りたたみ式と組立式との複合した水上遊戯具類であつて、旧法別表八の8にいう「折りたたみ式の水上遊戯具類」に該当するものであることが明らかであり、その機能ないし用途の面に着目すれば、人が乗つて水上の航行を楽しむための器具であつて、携帯ないし運搬に便利であるという特徴を有しているから、本件掲名物品に類似するものということができる。もつとも、本件物品と本件掲名物品とを更に些細に比較対照すると、航行における操作の仕方や水上における安定のさせ方等の点において、両者に差異のあることは否定することができないけれども、これらの点は、前示物品税課税の趣旨及び水上遊戯具類に対する課税の経緯を参酌すれば、本件掲名物品と本件物品との類似性に関する右判断を何等左右するものではない。

以上によれば、本件物品は、旧法別表八の8の「ゴムボート、フアルトボート及びゴムヨツトその他これらに類する折りたたみ式水上遊戯具類」に該当するものであることが明らかである。因みに、右の解釈は、昭和五九年改正法においても、立法の前提とされていたものということができる。

そうすると、控訴人が、本件物品を課税物品に該当するとして被控訴人の更正請求を理由がないものとした本件通知処分は適法である。

なお、被控訴人は、本件物品について、昭和五九年の改正法において暫定的な税率の軽減等の経過措置が講じられていないことをもつて、また同法の右の措置に関する規定を被控訴人に適用することをもつて憲法違反である旨及び本件物品は新規課税物品であるから、勿論解釈として、部分品に関する軽減措置が準用されるべきである旨主張するが、右の軽減措置は、新たに課税の対象となる物品について納税者に準備期間を与え、あるいは課税による種々の取引上の激変を緩和する者の目的のもとに設けられたものというべきところ、前示のとおり、昭和五九年改正法においては、本件物品について右の措置は講じられていないけれども、右に見たように本件物品は右改正前から課税物品に該当し、改正によつて新規に課税されたものではなかつたのであるから、右措置が講じられていないこと及び改正法の被控訴人に対する適用が違憲であるとの主張並びに勿論解釈に関する右主張は、いずれもその前提を欠くものであつて理由がない。

また、被控訴人は、控訴人は、旧法別表八の8の「これらに類する」の解釈として、当初は抗弁一3(六)のとおり主張してきたのに、原審第五回口頭弁論期日において抗弁一3(五)の主張をし、これに伴い右後者の主張を主位的に、前者のそれを予備的とする旨主張するに至つたが、これは、物品税法における課税物品該当性の判断に関する理由の差替えであつて、物品税法上の個別掲名主義や信義則に反し許されず、また、憲法の租税法律主義の原則に基づく課税要件明確主義等に照らすと、右の規定について二様の解釈ができるとすれば、右規定自体が憲法に違反し、無効である旨主張するが、控訴人は本件物品が本件規定に定める物品に該当することをもつて課税の根拠とする旨を終始主張しているのであるから、課税の根拠に関して理由の差替えがあつたものということはできない。被控訴人の指摘する主張の変遷の如きは、右の課税の根拠についての主張を明確にし、ふえんする過程に関するものであつて、このような点に関する主張の変更が課税要件を明確にする等の観点から許されないものと解することはできないから、被控訴人の右主張は失当である。

五  無申告加算税賦課決定処分の適法性について

当裁判所も控訴人が昭和五九年一二月三日にした右の処分は適法であると判断する。その理由については、次のとおり付加するほか、原判決理由第五項の説示のとおり(ただし、原判決五一枚目(理由の一六枚目)裏四行目の<証拠略>を<証拠略>に改め、同五二枚目(理由の一七枚目)裏六行目の「三」を削る。)であるから、これを引用する。

被控訴人は、本件物品については昭和五九年四月分までは非課税であり、しかも本件物品の部分品については経過措置により同年五月分から九月分まで非課税とされていたのであるから、一般人としては、本件物品についても同年五月分は非課税と考えるのが当然であるうえ、これらの点に関する疑問点を課税当局に対して質すに日時を要し、申告期限が二日過ぎただけであるから、右期限の徒過については国税通則法六六条一項ただし書の「正当な理由」がある旨主張する。

しかしながら、前示のとおり、本件物品は旧法当時から課税物品であつて、その課税扱いも定着していたのであり、また、被控訴人は、旧法当時から、課税当局からの通告に基づいてのことであつたにしても、納税申告書を提出して納税するなどして、本件物品が課税物品として取扱われていたことを認識していたのみならず、昭和五九年五月分の本件物品に関する物品税については、予め公布された改正法において課税の対象であり、かつ非課税等の暫定措置もないことが文言上明白であつたにもかかわらず被控訴人は課税当局の説明や指示に従わず、提出期限内に本件物品に係る物品税の納税申告書を提出しなかつたのであるから、たといその遅れが二日間にすぎないものであつたにしても、右期限後の提出に「正当な理由」があるとは認められない。被控訴人の右主張は失当である。

六  結論

以上によれば、本件通知処分及び前示無申告加算税賦課決定処分はいずれも適法であり、右各処分の取消しを求める被控訴人の本訴請求はすべて理由がないからこれらを棄却すべきであり、これと結論を一部異にする原判決は一部不当であつて、本件控訴は理由があり、本件附帯控訴は理由がない。

よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 橘勝治 安達敬 鈴木敏之)

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